普段ならもう誰もいない夕闇の教室。
書類を片付けていた私が生徒会室の明かりに気づいたのはつい10分程前の事だった。
もうとっくに下校時刻は過ぎている。
また彼が一人居残り作業だろうか、小さい溜息を漏らしながら
他の教室の戸締り確認ついでに生徒会室に向かったのだ。
生徒会室にいたのは想像通りの人物-生徒会長のクレフ-だった。
後少しだからと他の役員を帰し、残りの書類を片付けていただけだと言うが
生徒一人残す訳にもいかず、他愛のない話をしながら彼の仕事が終わるのを待つ事にした。
2年生ながら生徒会長を務めている彼は、成績は常にトップ、性格も良く人当りも良い。
ただ少し責任感が強すぎるきらいがあり、一人で無理をしがち。
週に数回授業をするだけの私はそのくらいの印象だった。
作業が終わったと言うクレフと生徒会室を出ようとしたその瞬間
進路を塞ぐように彼の腕が目の前に伸びてきたのだ。
『ちょっと、一体何を…』
『何を、と言われると…そうですね、壁ドン…と言うものでしょうか
先生はご存じないですか?』
事も無げに言い放った彼の綺麗な顔は柔らかな笑みを浮かべていた。
『そ、そんな事くらいは知ってるわよ!何で私が貴方に壁ドンされているのかって事を聞いているの!』
教師が生徒に発する口調としては相応しくない程に声を荒げてしまっている自覚はある。
でも、今の状況であれば仕方のない事だった。
『…龍咲先生は、随分と無防備ですよね。こんな時間に誰もいない教室で、男子生徒と二人きり…だなんて』
離れようとしても、いつの間にか腰に回された手がそれを許さない。
『 すき です』
熱い吐息と共に、シンプルな告白の言葉が耳に触れた。
今までも生徒に告白された事はあった。
未だ新任の域を出ない私は、教師と言っても他の教師と比べれば自分達に近い存在に見えるのだろう。
軽い告白には軽く、真剣な告白には真剣に、私なりに言葉を選んで断ってきた。
彼を特別だと思っていた訳ではない。
こうやって一人残っている姿を今までも何度か目撃した事こそあったが
注意しに行かねばと思っている内に帰っていたので授業以外で話すのすら今日が初めてだった。
でもいつもの様に言葉が出ない。
それでも何か言わなければと口を開きかけた時に、彼の人差し指が唇に触れた。
視線が、交差する。
『返事はまだいりません』
そう言った穏やな笑顔が急に、大人びて見えて
どくん、と心臓が鳴る。
身体の奥が熱い。
彼の顔を見つめたまま何も言えないでいる私から、そっと離れて背を向ける。
黙々と帰り支度を始めた彼をただ見つめていた。
まだまだ大人の男の人ではない、でも大きさはもうそれに近い背中。
仲の良い友人たちがそろそろ結婚するかもなんて話していた事がふと頭をよぎる。
元々恋愛には疎かったのに教師になってからは仕事だけでいっぱいいっぱいで、
結婚どころか恋愛すら随分と縁遠いものになっていた…はずだった。
帰り支度を終えた彼がゆっくりと振り向く。
『帰りますよ?』
未だ扉の横から動けずにいる私を他所に手早く戸締りを終え
鍵を施錠する音が廊下に響く。
とりあえず今は早く、帰ろう
そう職員室に向かおうと振り返った瞬間に
ゆるりと弧を描いた唇が私の頬に触れる。
『!!!?っ』
『それでは先生、お気をつけて。お疲れ様でした。
先程の返事はまた、卒業後に伺いますのでその時はよろしくお願いしますね』
触れたと気づいた瞬間に離れたその唇は、にこりと悪戯な笑みを浮かべて
そう言い残して夕闇に消えて行ったのだった。
彼の卒業まであと一年半…
自分の体温が随分とあがっている事を自覚しながら
無意識に頬に触れた。
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ちゃんとそれらしくかけてるか不安ではありますが、めちゃくちゃ楽しくかいてしまいました!!
高校教諭海ちゃんに迫る外面優等生生徒会長クレフさん!
龍咲先生めっちゃ生徒にもてもてだろうな~。
男子だけでなく女子にももてそう…
クレフくん(呼ばせたかったのに呼ばせるタイミングを作れなかった…)もめちゃくちゃもてるんでしょうね!
でも!クレフくんは龍咲先生にしか興味はないし
龍咲先生もこれからクレフくんを意識し始めるんですよね~~!!
息をするように惹かれあう二人 フフフ///
という妄想全開でかいたのですけどどうかな…表現できてるかな…
ちょっとだけでもお気に召して頂けると嬉しいです
クマノさん、本当に素敵なリクエストありがとうございました!!



