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My dear

 

空が白み始め  
濃紺の空は次第に輝くオレンジに染まる  
鳥たちのさえずりは何よりも早く耳に届く音楽になり  
目覚ましのように窓の外を賑わせる  
 
 
ゆるやかにまどろみの世界から意識が還り  
薄く瞼を開く  
数回瞬いて  
ぎゅっと目を瞑り  
そのままうーん、と小さく唸って伸びをする  
 
…朝、だ  
 
未だぼんやりとした頭で  
カーテン越しに差し込む光に眩しそうに目を細める  
実際光を直視しているわけではないので眩しくもなんともないのだが  
 
隣から聞こえる規則正しい寝息にそちらを見れば  
薄紫の髪に半分隠れてしまっている愛しい者の寝顔がある  
 
…珍しい  
今日は私の方が先に起きちゃったのね  
 
薄く笑んでゆるりと手を伸ばし、彼の髪をさらりと撫でた  
しっかりと閉じられた瞳  
彼の睡眠の邪魔をしないように、と  
そおっと少し身を起こしたところで  
 
「!」  
 
途端にばっちり目が冴える  
自分が衣服を身につけていないことに気付いたからだ  
そして同時に思いだすのは昨晩のあの甘い時間  
触れ合った温度は鮮明にその肌に残っている  
 
「~~~っ……」  
 
誰が見ているわけでもないのに真赤になり、きょろきょろと辺りを見回し己の衣服を探す  
 
…あった!  
 
少し離れたところにそれはまばらに落ち  
それを覆うかのように隣で眠る彼のローブが上から重ねられていた  
 
…と…遠い…  
 
手や足を伸ばしたところで届きそうもない場所  
 
…そこまで歩くのか?  
よし、シーツを纏って行こう  
いや、それでは今隣に眠る彼のシーツをも剥いでいくことになる  
それは気が引けるし  
そもそも彼のローブや服やらも自分のそれに重ねられているので、当然彼も自分と同じ状況なのだろうと容易に察しがつく  
それでシーツを剥いでいくのはひどすぎやしないだろか…仮に自分がされたら罵詈雑言をあびせかけた上で暴力に訴えるに違いない  
そして、何より彼を起こしてしまうのは忍びない  
 
「…。」  
 
しばらく考えて  
彼女はことり、と再び己の身体を元の位置に横たえた  
 
しばらくこうして彼の寝顔を見ているのも悪くない  
 
そう思ったのだ  
 
いつも朝の早い彼のこと  
きっとすぐに目が覚めて、その思慮深い青の双眸を細め朝の挨拶をしてくれるに違いない  
 
そう思うだけで口元が緩んでしまう  
 
 
 
 
…それにしても  
 
ゆっくりともう一度彼の髪に触れる  
 
…きれいな髪よね  
 
薄紫のその髪は柔らかく、さらさらと彼女の指先をすり抜け、落ちる  
 
…猫っ毛なのねぇ  
 
毛先をいじってみたり  
前髪に指を通してそのまま頭を撫でてみたり  
それでも彼からは小さな寝息が聞こえるばかり  
 
…これだけいじられても起きないのね  
 
なんだか不思議、と口の中でつぶやく  
 
もっと敏感なのだと思っていた  
寝ている時に触られるのを嫌がるタイプだと思っていた  
どちらかといえば神経質な人だと思っていた  
 
結構鈍感なのかしら  
 
それは意外だ、と少し笑いがこみ上げる  
 
威厳と自信に充ち溢れ  
国民に畏怖され、尊敬される存在  
最高位の導師という立場にいる彼が  
今この瞬間は何とも無防備な姿をさらしている  
 
自分とそう年の変わらない、普通の青年に見える  
その寝顔だけを言えばむしろ頼りないとさえ感じるほどだ  
 
長い睫毛…  
 
閉じられた瞳に影を落とす睫毛  
髪と同じ薄紫のそれをまじまじと見る  
 
一つ一つの彼を構成する全てが女性から見ても羨ましいほど美しく見えた  
 
…ずるいわ…男のくせに  
 
それを少し妬ましく思って彼の頬をつん、とつつく  
そして段々と紫がかった青が恋しくなる  
 
…ねぇ、もう朝よ?  
いつまで寝てるの?  
あなたの寝顔を見てるのも良いけれど  
やっぱり起きてるあなたの方が何倍も良い  
 
でも、だからと言ってわざわざ起こすのはどうかと自分でも思う  
彼を起こす理由が、構ってほしいからだなんて口が裂けても言えない  
 
ふぅ、とため息をつく  
 
もう一度寝なおそうかしら  
 
どうせ朝ごはんまでにはまだまだ時間がある  
きっと自分が寝坊したら彼が起こしてくれるに違いない  
 
よし、そうしよう  
 
そして彼女は胸元をシーツで押さえながら上体を少し起こす  
その豊かな蒼い髪がさらりと揺れた  
 
太陽がもう少し高く昇り、彼のその瞳が開くまでのその僅かな間だけ、と  
おやすみなさいのキスを彼の頬にひとつ落とす  
 
ちゅっ、と小さな音をたてて彼女は満足そうに笑んだ  
 
シーツの中にもぐり込み、瞳を閉じる  
 
 
 
瞬間に  
 
「きゃっ!」  
 
彼女は小さな悲鳴をあげ、眼を見開いた  
 
一瞬のうちに自由を奪われた身体  
伝わる温もり  
そして  
視界を覆う薄紫  
 
気がつけば、温かい腕に抱きしめられていた  
 
「おはよう、ウミ」  
 
耳元で囁かれたいつもの挨拶  
心地よく響く大好きな低音が鼓膜を震わせた  
その声色は少々笑いを含んでいて…  
 
「くっ…クレフ!起きてたの?!」  
 
海は驚きで早鐘を打つ心臓に手をあてるようにして声を上げた  
 
「いいや?今起きた」  
 
否定するその声はしかし少々楽しげだ  
そして彼女を抱く腕に力を込める  
 
「いつになったらお前の声で起こしてもらえるのかと待っていたのだが」  
 
「起きてたんじゃない!!」  
 
腕の中で非難の声をあげる彼女にクレフはくつくつと笑う  
 
「あのように触れられては寝ていられないさ」  
 
「狸寝入りだったのね…」  
 
「そうともいうかもな」  
 
悪びれもせず言う彼に海はため息を落とした  
 
「しかし珍しいな。お前が早起きとは」  
 
クレフは言い、海を抱く力を少し緩める  
 
「…そうね。クレフよりも早く起きるなんて自分でもびっくりだわ」  
 
「今日は雨だな」  
 
「失礼ね、快晴よ」  
 
二人は顔を見合わせ、吹き出した  
 
そしてクレフが少し上体を起こす  
 
「…。」  
 
何かを確認するように視線を泳がせる  
それに気付いて海は彼の腕に触れた  
 
「?」  
 
クレフが首を傾げていると  
 
「もう、起きちゃう?」  
 
「…。」  
 
少し寂しげに見上げてきた彼女にクレフは一瞬きょとん、とした顔をし  
そして、海の言わんとすることに気付き  
ふっと笑い  
するりともう一度シーツの中にその身を滑り込ませた  
 
「今日は少し寝坊しても構わないだろう」  
 
彼女の頭の下に腕をまわし、笑いかける  
海は照れたように笑みを浮かべ、小さく首を縦に振った  
 
 
 
その豊かな蒼い髪を撫で  
彼女の額に口付けを落とす  
それに応えるように海は彼の胸元にすり寄った  
 
「…ウミ」  
 
彼の声に、温度に、特大の安心感を覚え彼女はゆっくりと瞼を閉じる  
ゆるやかにまどろみの中へと引き込まれていくのを感じている  
 
と  
 
「ちょっ…ちょっと、クレフ!」  
 
突然焦ったように海は声を上げ、彼の胸を押しやった  
 
「なんだ?」  
 
一方のクレフはにっこり笑顔  
 
「なんだ、じゃないわよ!」  
 
真っ赤になって抗議するように、悪戯を仕掛けてきた彼の手を掴む  
 
「何すんのよ」  
 
「なに、とは?」  
 
クレフは簡単に海の手を押しやり、そして彼女の後頭部に手を添え、引き寄せる  
 
「…っ。…とぼけないでよ。へ、変なとこ触ったくせにっ」  
 
至近距離の紫がかった青い瞳に少し怯み、しかし負けじと睨みつけた  
 
「誘ったのは、お前だぞ」  
 
目を細め、妖艶に笑みを作り、半ば強引に彼女の唇を奪う  
 
「っ…さっ?!誘ってなんか!!」  
 
唇が離れた瞬間に批難の声を上げるが…  
 
「もう、遅い」  
 
「っん…ぁ…」  
 
再び奪われた唇と夢心地  
触れてしまえばあとは囚われて、逃げることは叶わず、流されるまま  
 
 
 
 
おはよう  
僕の可愛い青い小鳥  
 
 
 
 
その日導師は珍しく昼過ぎまで皆の前に姿を現さなかったとか…  
 
 
 
 
 
 
*****  
 
「ユメウツツ」様(管理人:クマノさま)の3500hitを踏んで頂きましたキリリク小説。  
 
とってもアバウトに「ラブラブなクレ海」なんてリクエストしてしまったのですが……  
素晴らしすぎます、クマノさんっ!!  
もうラブラブ夫婦ですよぅ…  
海ちゃん可愛すぎるし、Sなクレフさんが素敵すぎる・・・・・・  
ベッドでいちゃいちゃする二人に  
まじで  
も だ え ま し た !!ヽ(≧∀≦)ノ  
 
クマノさん、本当にありがとうございましたー!!!



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